みちゃろっく

誰かが掻き鳴らしてくれた音楽を書く

2022年のMy Hair is Badにフォーカスした意欲作『angels』

 

Angels

Angels

 

Mステで初のテレビ出演、メジャー後の全曲をサブスク解禁、渋谷駅前に大々的な広告展開。

破竹の勢いで新たな挑戦をし続けるMy Hair is Bad

4月12日に約3年ぶりとなるアルバム『angels』が発売された。

 

『味方』と『正直な話』、『綾』と『舌』はいずれも恋愛の曲だが、幸せと別れ両方をリアルに描けるマイヘアの真骨頂が見てとれる。

発売に先駆け解禁されていた『カモフラージュ』や『歓声をさがして』は、アルバムとして聴くことでよりマイヘアの青春らしさが浮かびあがる。

時代を切り取った『白春夢』に、耳に残ること間違いなしの『仕事が終わったら』『リルフィン・リルフィン』。

それらの楽曲に全く埋もれない『サマー・イン・サマー』『翠』『ギャグにしようぜ』『花びらの中に』といった新曲たち。

 

アルバムは多くの人に待ち望まれ、メディア露出が増えたことでより多くのファン層を獲得している2022年のMy Hair is Bad

『angels』は、今の彼らだからこそ世に出せる曲が並ぶマイヘア屈指の意欲作だ。

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カモフラージュ

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一曲目を飾るに相応しい、今のマイヘアを反映するような快速スタートダッシュ

1万を中心に歌詞の頭は〈ou〉で韻が踏まれており、聴き心地が良い。

 

《思い出はあの頃の今だった》《いくつになっても心は自由であることを》

いつまでも若々しく、熱いライブを届け続ける3人らしい青春の一曲。

 

携帯片手に聴きながら、MVだとここでロゴが来るんだよなぁと想像してしまう。

MVが3分33秒=《僕らのナンバーは333》なのは狙ったのかな…。

 

 

サマー・イン・サマー

SUMMER SONIC 2022の出演が決まったことだし、夏空の下で聴きたい曲が増えた。

 

思い出と今、漫画と実写映画という対比を各所に織り交ぜながら、未来への光も歌っている。

今は思い出になっていく(『カモフラージュ』)と言い、今の光は未来に届くと言っている。

 

ずっと繋がっていると示唆するのは、彼ららしさを残しながらも確実に世間に名を広げている最新のマイヘアが鳴らすからこそ意味があるのでは。

 

 

歓声をさがして

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Mステで披露され、アルバム発売に合わせMVも公開された注目曲。

好きという気持ちを真正面から肯定し今を謳歌するアンセム

 

音楽に限らず《なんでもいい 好きならいい》と、

《いつかそれに出会えたらいい》と、聴く人すべての背中を押す

 

今回の施策たちでさらにファン層を広げるマイヘアにぴったり。

 

 

味方

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2020年12月23発売の配信シングル『love』より、今作にも収録。

元から配信されていたことに加え、最近のライブでもセトリ入りしていたことから耳馴染みある人が多いのでは。

 

バンドサウンド3曲の後に持ってくるバラード調の曲として間違いない力強さを持つ。

既発曲ながら〈映画〉や〈漫画〉といった言葉で新曲とのつながりが垣間見える。

 

君と僕の、穏やかながら強かな愛を描いた名曲。

 

 

「予感の続きとして聴いてください。」

3月26日のダイナマイトホームランツアーファイナルでの椎木のMC。

 

リアリティある少し大人な恋愛模様を描くのが得意な椎木の新境地。

 

彼女には彼氏がいるとわかりながらも夢中であった『予感』、結婚後も続いた内緒で綺麗な秘密の関係がついに『綾』で終わる。

君からの《「またね。」》は、僕が言う《さようなら》に。

両曲どちらともで電話をかけることが許されていない僕が切ない。

 

綾という言葉は複雑に交わると言った意味を持つとともに、上品で美しい女性らしさをイメージさせる。

ふたりの関係と、僕から見た君。ふたつの意味を込めたのかな。

 

 

正直な話

「今目の前にいるのが、My Hair is Bad。」「信じなくていい、期待してくれ。」

言葉数が圧倒的に多いライブをしながら、実力で魅せてきたマイヘアを体現する曲。

 

行動を信じながらも、やはり言葉にして伝えることは大切だということ。

恋愛ソングなのに、生き様やバンドの背景にまで思いを馳せられる不思議な曲だ。

 

《正直な話 僕のすることを信じてほしい「やっぱこの人でよかった。」と思えるようにするから》椎木渾身の一言のようなこの部分が大好き。

 

 

アルバムの真ん中に位置する『翠』。

恋愛模様3曲が続き、ここからまたリズムが昇りはじめる。

 

曲名通りの爽やかさ

そしてマイヘアの曲は口語であるからこそ心に響きやすいと再確認する曲。

 

内心を素直に赤裸々に話しているような歌詞と、旅立ちへの寄り添い。

忙しくなった時原点に立ち帰れそうなこの曲を、来年のも聴いていたい。

 

 

仕事が終わったら

痛快ソングがきた!!酒名連呼から始まる駆け抜けソング。

約90秒に働く人の欲望を詰め込んでいる

マイヘアのアルバムを聴いていて、こういった曲調が来ると嬉しくなる。

 

未成年でマイヘアを好きなみんな、数年後にこの曲をより噛み締めよう。飲み干そう。

学生の頃マイヘアを聴いていたのに気づいたら社会に出て距離が生まれたそこの元学生、これを聴け、マイヘアの沼に戻ってこい。

 

 

リルフィン・リルフィン

全曲トレーラーでも異彩を放った、みんな大好きこの枠

過去作では『燃える偉人たち』『ワーカーインザダークネス』など、どれも中毒性抜群

 

早くライブに行って、サビの部分でコールアンドレスポンスしたい…!

椎木「リルフィン」観客「リルフィ~ン!」椎木「中指より」「も~!」やりたい…!!

 

考えるな感じろと言いたい最強ソング。

個人的には《生きて腸まで届いた元カレの「重いんだよ。」》で、渋谷広告の隣にあった腸スゴの広告との運命を感じてクスッとなった。

 

 

ギャグにしようぜ

言葉がぎゅっと詰まったバンドサウンド、最高。

 

《嫌な記憶の花が違う色に染まるまで水をあげよう》

曲全体を包むあたたかい優しさが、この歌詞にとても表れている気がする。

 

楽観的だけれども見離しはしない、また歩き出すために今はちょっと休もうよと言ってくれるマイヘアの優しさが染みる。

 

 

衝撃的な出だし。

《「このまま君の舌を噛み切ったら 嘘をつけなくなるかな?」》

Twitterでも呟いたが、五月の◯や貴方解剖純○化がよぎる。

 

無垢で真っ白な恋愛の対極にある、今にも崩れそうでグレーな恋愛を奏でさせたら一級品のマイヘア。

君への執着、どろっどろの欲を描いた渾身の恋愛ソング。

 

嘘をついてほしくない、けれど本当だけだったら傷ついて終わりが見えてしまう。

僕の目線のみで描かれるからこその愛の重さが癖になる。

 

 

白春夢

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聴く人を一瞬で2020年4月に連れて行く。

コロナ禍で誰もが経験した淡々とした家での毎日や倦怠感を作品に昇華している。

 

ステイホームで生活が一変し、非現実のようで味気ないあの日々が〈白昼夢〉や〈春夢〉とかけられているのだろう。

 

《もう元に戻るより 元より良いように 夢からまた夢へ》

多くの人が願う日常と、そして音楽業界への願いが込められているように聴こえる。

 

 

花びらの中に

今年の3月、マイヘアはメンバー全員が30代になり新フェーズに突入した。

「桜は散る時が一番綺麗だ。」と、見事な散り際を見せた代々木でのライブがよみがえる。

 

「いつか終わるバンド活動というものを、終わりを意識しながらやっている。でも、いつまでも続けていきたい。」

 

代々木でそう話した椎木の姿が、《いつか必ず沈む船でまだあの地図を描き続けてる》といったフレーズから思い出される。

 

既に新しいことをやりまくっている彼らだが、30代のマイヘアは一味違うぞという決意表明にも受けとれるアルバム最後の曲だ。

 

 

 

30代という一つの区切りにある今、

My Hair is Badのこれまでとこれからに思いを馳せることができる今作。

 

いつもTシャツにスキニーのラフな格好で、全力で音を掻き鳴らすマイヘア。

私にとって、彼らは文化祭の学生バンドのような熱さと眩しさと脆さを感じさせるバンドだ。

2018年の春、ツタロックで初めて彼らの音楽を生で聴いた。

そこからワンマンへと足を運び始め、日に日に好きが大きくなった。

 

これまで精力的なライブ活動をし、ダイナマイトホームランツアーでの360度ステージでは

その圧倒的な実力を見せつけた。

今回アルバムとともに多くの試みをした彼らの音楽は、

今まで以上に多くの人に届くようになる。

ライブに足を運ぶ人も増えるだろう。

 

ライブでのロックバンド然とした心意気を持ったまま、これからも進み続けていってほしい。