Vaundyのここ1ヶ月の日記を読みたい
Vaundyが無双している。
ここ1ヶ月、彼が日記をつけているとしたらこんな感じ。
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6月7日
国民的俳優・菅田将暉に「惑う糸」を提供。MV監督も務める。
7月6日
国民的漫画・ONE PIECEとのタイアップ、ウタ(Ado)の「逆光」を手がける。
7月11日
「走馬灯」をリリース。3日経った今、MVは既に147万回再生されている。
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この輝かしい日々の間に、大学に通っていると思うと恐ろしい。
現役大学4年生、もはや授業よりも各地の音楽フェスに出席しているといっても過言ではない。
初めて生で曲を聴いたときから思っていたけど、本当に末恐ろしいミレニアムベイビー。
当時21歳の彼のパフォーマンスを生で浴びたとき、23歳フリーターの私が死にたくなったのは今になっては良い思い出。
その後インタビューを読んで、自信・聴き手への理解(=私たちがポップスになにを求めているか)が化け物で、ビッグマウスだけどそれを裏打ちするくらいの実力と先見の明があって。
今では輝いてしか見えません。生きてまたライブに行きたいと思えます、初対面の頃と真逆です。
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ものすごいリリーススピードで新曲を世に放っているが、どれもVaundyらしさを感じさせる粒ぞろいの音楽たち。
最後に特筆すべきは、Ado×VaundyのONE PIECEタイアップ、2人はONE PIECEより歳下ということ。連載開始後に生まれた2人が、最終章を前にした劇場版に花を添える、光を照らす。
これからの日本の音楽、希望しかないんじゃない?
ライブハウスで犬に出会った【サウナガール】
ライブハウスで犬に出会った。
少し言葉を足すと、
ワンと吠える愛くるしい犬ではなく、
ドラムを叩く”犬さん”に出会った。
私「犬・・・と、達人(たつじん)???」
ライブハウスに向かう電車内。
ひどく困惑したのが、私とサウナガールの初めまして。
数時間後に迫るライブのバンドをTwitterを調べたら、余計に謎が深まった。
7月3日の渋谷O-Crest、『ムロフェスvs後夜祭』。
サウナガールというバンドの演奏を初めて聴いた。
第一印象こそ犬という名前に引っ張られたが、
実際はただただその音楽に惹き込まれた。
メンバー全員を観たくて聴きたくて、
目をキョロキョロさせながら客席に立っていた。
セトリ用紙をもらっていた見知らぬ方に
「写真撮らせていただいてもいいですか?」と
勇気を出して声をかけに行くくらい興味を持った。
クラスに1人はいそうな、そんな人を4人集めたバンド。本人たちを前に受けた印象はこれ。
決してそこらのありふれている奴だなんてdisではない。
※ここから書く各メンバーの印象は完全な独断と偏見が含まれます。
ギターボーカル・トシマサくんは、ちょっとおとなしめだけどニッチな音楽を聴いてそうで、秘めたこだわりを持ってそうな男の子(なイメージ)。
気持ちが溢れ出て声の抑揚が気持ちいい、伏し目がちに歌うときですら届けたいという思いがびりびり伝わってくる人だった。
ギター・シノミヤくんは超個性派。ファッションセンスも発言もぶっ飛んでるしたまに何考えてるかわからない、ミステリアスだけど惹かれる人(なイメージ)。
ステージの真ん中で、音楽に身を委ねて身体全部で表現している、視線を釘付けにするギターを弾く姿が今も頭に残っている。
ベース・達人くんは、古着やサブカル文化に通じてて運動もばりばりやってますオーラが出てる笑顔が素敵な方(なイメージ)。
前髪からたまに覗く目が優しくて、ベースとコーラスを担い演奏を支えながら客席をしっかりと見て通じ合っている好青年でした。
ドラム・犬くん、常人の皮を被りながら常に予想を超える言動をしてくれそうなダークホース男子(なイメージ)。
ステージ後方から送るメンバーへの視線が真剣そのもの。メンバー同士で目が合うとより楽しそうにドラムを叩いている様子が印象的。
それぞれが友達にいそうな親しみやすさだったり、
音楽への直向きさを感じさせたりする4人。
文化祭での自主企画バンドのような、
ただ間違いなくそれ以上の熱と演奏を届ける4人。
彼らの「エモキャッチー」というコンセプトは、そんな親近感や熱さからきているのだと思った。
今までは1万人規模のライブばかり行く生活だったが、
最近はライブハウスに赴く回数が徐々に増てきている。
「パーじゃなくてグー(拳)掲げるんだ」
「こんなに近くていいの?」
毎度ど素人な感想を抱きながら、
バンドマンがぶつけてくる熱量と、
フロアから溢れる愛と、
バンドとライブハウスの強い絆にほだされている。
その熱の中に自分が1番入り込めたのがサウナガールだった。
好きだ、と直感的にグッとくるあの感じ。
1曲聴いただけでわくわくするあの感じ。
またライブハウスで会いたい。
次こそCDを買って、直接感想を伝えたい。
蛇足
そしてあとから冷静になって「達人(たつじん)じゃなくて達人(たつと)……?」とハッとしたけれど、調べてもわからなかったので誰か真実を教えてください。。。
そして犬くんの由来は……?なぜ犬……?
サウナガール
静岡県発 4人組 エモキャッチーロックバンド
公式Twitter @saunagirl_info https://twitter.com/saunagirl_info
Apple Music https://music.apple.com/jp/artist/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%AB/1508682584
Eggs https://eggs.mu/artist/saunagirl_info/
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCbI0-KDgwXglmvllvJBkwkg/featured
人間味と弱さと一緒に、ミセスが帰ってきました。
2022.7.8 ぴあアリーナMM
Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”
Mrs.GREEN APPLEの弱さを見た。
都合よく解釈してしまえば、弱さを曝け出してくれた。
ポップで爽やかなパブリックイメージに対して、その実、風刺的であったり暗い根を持ったりするのがMrs.GREEN APPLE……
というのがフェーズ1までの話。
こんなにも人間らしいバンドだったっけ。
最初のMCから泣いたせいで鼻声、最後には顔ぐっしゃぐしゃにして感謝を伝えてくれた若井くん。
あの優しい表情で涙を堪えてる様があまりに2年間の長さを感じさせたよりょうちゃん。
表現者としてまた腕をあげてきたかと思えば、ステージで泣くことができたんだねもっくん。
3人から紡がれる言葉は、伝わってくる思いは、今日まで待っていた人たちに向けた感謝しかなくて。
コロナで音楽業界が止まって、ライブが当たり前じゃなくなった頃の感覚を思い出した。
今は声が出せないことにばかり目がいきがちだけど、あの頃はそもそもライブ自体がなかった。
少しずつライブやフェスが戻っていく中で、Mrs.GREEN APPLEの帰りをずっと待っていて。
彼らの音楽だけは、この2年半、いつもiPhoneの中にあった。
サブスクで今までのシングルやアルバムを擦りに擦りまくって、好きな曲増えちゃったりして。
バンドとしてもファンが増えて、本当に活動休止してるのかたまに怪しくなったりして。
でも今日確信した。
今日、本格的にフェーズ2が始まった。
サブスクの普及で新譜も過去作も関係ない時代だけど、やっぱりライブに勝るものはない。
デビュー曲「StaRt」で"ただいまーーー!!"と叫ぶもっくんを見て思った。
本当に帰ってきたなって。
今までのミセスのライブは、コンセプトや表現力が凄まじくてある種台本があるような完璧さがあった。
ただ今日は違った。
バンドマンというか、もっくんとりょうちゃんと若井くんがステージにいた。
3人の苦しみや寂しさ、なにより喜びと幸せが前面に全面に出ている2時間半。
音源では決して味わえない、声の上擦りや目の潤み。そんなものが詰まったライブだった。
もっくんが真面目に向き合い過ぎて苦しくなって休みたいってなったあの日から、社会もバンドも自身もたくさん変化して崩れただろうに、また戻ってきてくれてありがとう。
フェーズなんてのはただの括り。
今までもこれからも、ミセスの活動を見届けられることが誇りです。
秋山黄色の初ワンマンにて、開始一音で泣いた話
5月26日 秋山黄色「一鬼一遊 TOUR Lv.3」 @KT Zepp Yokohama
上記のワンマンに行って、秋山黄色愛が爆発した話。
セトリネタバレありますので、
ご注意ください。
大丈夫な方のみ、スクロールしてくださると助かります。
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一曲目から涙が出たライブは、優に片手で数えられる。
一曲目の一音目から涙が出たライブは、今回が初めてかもしれない。
というのも、私が秋山黄色に惹かれた曲が『白夜』ということに深く関係している。
このブログで紹介したアルバムの締め曲でもあり、それだけ私の思い入れが強い曲でもある。
ツタロックやJAPAN JAMでは「白夜やってくれないかなぁ~」なんて期待しながら聴けず終いだった。
今回のワンマンツアーは3rdアルバム『ONE MORE SHABON』を引っ提げたもの。
さすがにやるだろう、たぶんアンコール前のラストとしてセトリ組んでるだろう。
ライブを楽しみにするあまり、今まで数々のライブでたくさんの喜ばしい裏切りやサプライズを喰らってきたことを忘れていた。
振り返れば、私が好きなアーティストはいつだって自由で、こっちの予想なんて軽々しく超えてきて、息が止まりそうな熱をぶつけてくれた。
ツアーに行った人はお分かりの通り、まさかの『白夜』はじまり。
幸せな裏切りを、秋山黄色にもされた。
一音で『白夜』だと確信、正直歌い出しは頭が一杯いっぱいでちゃんと聴けていなかった気がする。
「アルバムで最後に収録されてるからって油断してんじゃねぇぞ!」って言われてるみたいだった。
“幸福で死にたくないっていうのは この地球上で一番の不幸だね”
サビのこのフレーズが聴けただけでとうにライブに来たことが報われて肯定されていた。
そこから先は、私が今年秋山黄色に出会った意味が凝縮された2時間だった。
出会ってよかっただろって訴えかけられて頷くことしかできないライブだった。
なんなんだろう、あの二面性。
死ぬこと、幸せすぎることを極度に怖がって跳ね除けてすらしまいそうなのに。
寿命が縮まるようなこの先の人生を前借りしているような、ライブっていう生物(ナマモノ)を謳歌するアクトをする。
予約の電話も出来ない小心者なのに、「できるよ。できます。無責任な発言じゃない。俺は天才ってアドバンテージがあったけどさ(笑)みんなもできるから。朝起きたらできますって言え。」って語る時は自信に満ちてる。
体力ゴミだし友達との約束を前日ドタキャンしたくなるし飽き性だし。
普通の人なのに、私と同じ感性をたしかに持っているのに。
なんか違う。あの自信を裏付ける、どんな体験をしてきたんだろう。
音楽ライターを目指す身として、アーティストのバックボーンにはかなり興味があって。
この曲を作るには、言葉を投げかけるには、何があるのだろうと掘り下げたくなる。
だからこそ、最近純粋に音楽を楽しみきれなくなっているとも思う。
かなり個人的な話。
ライブ中も、「この空間をどうやって言葉にしたらいいのか、あの有名な凄い人だったらなんて書くのか、あれさっきなんて言ってたっけ、今の演出かっこいいな、最悪ださっきのMCの内容忘れた、てか無心にライブ楽しみたい、いや頭使ってこそだろ。」いろいろ考えて頭が分離しそうになる。
ただそれすらそうなって良かったと、秋山黄色にいつか携わってやるからなと思わせてくれた。私の考えすぎて深くまで知りたくて言葉にしたくなる性分が、彼をここまで好きにさせてくれた気がした。
「楽しいことほど長く続かない。悲しいことほどずーーーーっとある。それがぶった斬られる瞬間を。」
こんな感じのMCがとある曲前にあって。本当にぶった斬ってきた。
洋楽やK-POPを聴いて気取りながら自分最強って思いながら歩けちゃうあの感じ。
あの時間、全員が無敵だった。秋山黄色のバフにかかってた。
自然と体が揺れる、手を叩く、腕をあげる。客席から溢れ出したそれらも良かった。
秋山黄色のライブはお決まりがないと、事前情報で入手してたけれどその通りで。
あの秋山黄色が好きな奴しかいない最高の一体感を感じながら、各々がやりたいように楽しめというとこも二面性で。
その身軽さゆえに、フェスの大舞台で着実に新規を獲得していけるんだろうな。
ブログも佳境なので、もう何度でもいうけれど私は秋山黄色のギャップにやられてるので。
あと初めて尽くしなんです。
初めて雑誌から好きになった、内面から好きになったアーティスト。
初めて愛を解釈を言葉にしてブログで発信してみたアーティスト。
初めて見た目寄せたいと思って美容院予約して5年ぶりにパーマ当ててみた。
秋山黄色(青)
— みちゃこ 0626 BLT (@michaism) 2022年6月1日
色落ちしたら正真正銘の金髪✌︎
引くほど可愛いけどちょっと照れる。 pic.twitter.com/zk9ZBPSq4h
新しい髪色髪型はおかげさまで好評です。秋山黄色様様。
今はだいぶ金髪になって本家に寄ってきました。
死生観と幸せと音楽に対する考え方を知ってしまった以上、それを素敵だと思った以上、もう引き返せないほど好きなんだよね。
同世代っちゃ同世代。私の二個上。
人並みの感覚を持ち合わせながらのあのビッグマウスと攻めの姿勢。
這いつくばること、曝け出すことを恐れない度胸。
ただ、寄り添ってくれるような優しさと寄り添わないと崩れそうな危うさを孕んでる。
そんなん好きやろ!!
最近個人的に考えていた、本当に1番好きな曲は自分の体験ありきの好きなので、人に簡単にお勧めできないしするような曲じゃない説。
まさに秋山黄色はそうなりそうで。
ここまで読んでくださった努力家で変わり者な方がいるなら、どうかあなた自身の経験を秋山黄色に重ね合わせて好きになってください。
こんな感情的な言葉より今すぐサブスク開いてください。
でも、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
いつもより感情的で前頭葉直通な文章です。ただ、愛はいつもより多めに前に出してみました。
当ブログの一番最初の記事では『ONE MORE SHABON』を本気で考察していますので、
そちらもよろしければ。
春フェスでハルカミライとそのファンに面食らった(出会った)話
先日、人生初の春フェスに参戦してきました。
5月1日にVIVA LA ROCKへ、4日・7日にJAPAN JAMへ。
たくさんの感動と興奮があり、書きたいことが募る中で、
特筆していち早く残しておきたいのがハルカミライの話です。
上記の日程のうち1日と4日はソロ参戦だったため、
転換時間で各ステージの感想を簡単にツイートしていました。
冷静に簡潔にを心がけていたのですが、ハルカミライ直後のツイートは…。
↓↓↓
リハで次はパンクロックが来るぞって轟音ぶち鳴らすハルカミライ。とか呑気に書いてたけどどうしようハルカミライに出会った、出会っちゃった。このファンあってこのバンドはここまで来たんだって泣いちゃった。だめだ私の今日のビバラ、全部このステージに掻っ攫われるかも。#ハルカミライ #ビバラ
— みちゃこ (@michaism) 2022年5月1日
読んでいただくとわかるように、かなり動揺しています。
そもそもハルカミライのライブパフォーマンスを観ること自体、
この日のビバラが初めてでした。
事前情報といえば、『ピンクムーン』がお気に入り、
今年3月に発売された最新アルバム『ニューマニア』とそれに伴うROCKIN’ON JAPAN4月号のインタビューチェック済み、
高校の同級生がよくストーリーにあげているバンド、といった”どにわか”状態。
ファーストインパクトを大事にしようと、しっかり予習はすることなく初対面を迎えます。
リハの時点でビリビリと空間が揺れており、
直感的にとんでもないパンクがやってきたと感じました。
それに呼応するように一斉に手を掲げるファンの姿が目に入ると、
もうこの時点で心を完全に奪われていたように思います。
実際転換で移動中の人たちも、
無視できないその音の圧によりステージに目と心を向けていました。
〈ただ僕は正体を確実を知りたいんだ〉
なにより私の心を射止めたのは、1曲目『PEAK’D YELLOW』の歌い出し。
4人の声だけが、2万人の空間に響き渡る。
鳥肌が立ち、初めて聴くなんて関係なしに胸を打たれました。
久しぶりにこんなに熱くて真っ直ぐで飾らないバンドサウンドを浴びて、
涙腺がひどく緩い私は「昔から追ってたファンです」といった風に泣いていました。
盛り上がりを見せる会場を200Lvから観渡し、
「この人たちがハルカミライをこの大舞台まで連れてきたんだ」と感傷的にまでなりました。
これほどに今日まで印象深く鮮明に残っているのは、
バンドだけでなくそれを取り囲む環境ごと目の当たりにしたからです。
正直、面食らいすぎてその後のことは鮮明に覚えていません。
気づいたら橋本さんが上裸で旗を掲げているし、ギターが下手に転がっているし、
ベースがシャウトしているし、ドラムまで服を脱いでいる。
きっとしっかり予習していても、この生のアクトにぶん殴られ
何も意味をなさなかっただろうな、と思います。
サブスクでジャンルも時代も国も飛び越え音楽に出会える時代に、
ライブで出会えた。
その場に足を運んだ人にしかわからない形で好きになれた。
その事実が何より誇らしく、音楽好きとして冥利に尽きます。
あの日からプレイリストを作り、ライブ映像を探し、彼らの曲を聴いています。
でも、やっぱりあの熱量と叫びと即興感は味わえない。
またライブに行きたい、ライブで彼らを、曲を好きになりたい。そう思う日々です。
ちなみに単純なので、今月のLINEのプロフィールミュージックはハルカミライにしました。
ハルカミライについてのライブレポを書く日が、どうか早く来ますように。
十二分に心を掴まれたけれど、まだまだ出会ったばかり。好きになる余地しかないです。
このブログのコメントや私のTwitterで、
ハルカミライのおすすめポイントを教えてくださると助かります。
ここまで読んでくださった方に、春フェスに関わった全ての方に、
何よりハルカミライに心からありがとうと言わせてください。
全曲に共感!なのに歌声もストーリーもバラバラ。川谷絵音とボーカリストたちの一大アルバム『BITEKI』
毎週水曜日、世の中にニューリリースが出回る。
先週も多くの曲たちが世間の目に触れたが、今回はその中でも異彩を放つ『BITEKI』について書いていきたい。
indigo la End、ゲスの極み乙女。、ジェニーハイ、ichikoro、礼賛の5バンドのメンバーとして活動し、
美的計画、enon kawatani、独特な人という3つのソロプロジェクトを進行、
プロデューサーチームpaemukaに所属し、
DADARAYのプロデュースまで手掛けながら、
プロダクト"バンド"LATENCYも立ち上げる。
もはや人生一周分以上の肩書きを持つバンドマン(他に適切なカテゴリーがあるかもしれない)川谷絵音。
そんな彼が歌ってもらうことを委ねる美的計画の一つのゴールが、4月22日にカタチとなった。
全12曲。7曲の既発曲群に、新しい顔ぶれ中心の5曲が加わり形となったアルバム。
それぞれの声を活かしながら描かれる物語でありながらどことない統一感を感じるのは、川谷絵音の力量に他ならない。
美的計画とは
川谷絵音が手掛ける音楽を多様なボーカリストに歌ってもらい、1枚のアルバムを作り上げるプロジェクト、美的計画。始まりは2019年、にしなが参加した『KISSのたびギュッとグッと』。今作『BITEKI』では、「美しい声を更に美しくする音楽を作る」という計画のもとに10人の声が曲を連ねている。
美的計画プロフィール→https://wmg.jp/biteki-keikaku/profile/
以下、各曲レビューです。
7曲目の「点と線」、みなさんは君と僕のどっちが点でどっちが線だと思いますか?
それとも全く違うことを考えましたか?コメントしてくださると嬉しいです!
1 まだ浅はか (feat.和ぬか)
アルバムに先駆け3月11日に先行配信された。
「まだ浅はか 私浅はか」というサビの繰り返しがキャッチー。
言葉と声のどちらもが憂いを帯びるからこそ、これだけ浅はかといいながら深みをもつ曲。
サビに負けず劣らず、1Aメロ出だしの、〈あなた〉を前に駆け引きや嘘を仕向ける〈私〉の心情の対比も素敵。
今作どの曲を通しても言えること、というよりも川谷絵音に言えることだが、恋愛における心情描写が言い得て妙。
そこにとどまらず文章として読みたくなる歌詞を書く。
「私の頭の中のあなたの頭の中が あなたの頭の外の私だと望んでるままでは」
この歌詞を反芻している時点で川谷の術中にハマったなと思う。
和ぬか(わぬか):SNSを中心に活動するシンガーソングライター。TikTokでバズった『寄り酔い』を皮切りに、コンスタントに新曲をリリースしている。
2 青い理想郷 (feat.春茶)
ひとつの曲が終わると声が変わる。このプロジェクトならではの良さを早々に実感する2曲目。
透明感のある可愛らしい声で大人を敬遠する言葉を吐くのが、シンプルに刺さる。
これも一種の青春讃歌、と言えなくもない。
具体的な過去の栄光や現状への辟易を描かずとも、青春を輝かせることに成功しているからだ。
最後に、廃れていく青い日々を「青春が赤くなる」と言ってのける。
ユートピアは赤くない。見事なタイトル回収。
どういう生き方をすればそんな表現が思いつくのか教えてほしい。
春茶:登録者120万人越え(2022年4月27日時点)のYouTuberアーティスト。名曲カバーの歌動画の他に、ゲーム実況もあげている。
3 瞳に吸い込まれてしまう (feat.謎女)
若干の気だるさと憂いのある魅力的な声の持ち主、謎女。
陰口っぽい、人気者の〈あの子〉への羨望、謎女の声と見事にマッチした楽曲。
「登校日に限って化粧ノリが悪いの 前髪も決まらないの」の部分には全女子が共感するんじゃないか。
何度も言ってしまうけれど、「川谷絵音って女の子?」と疑問を持つくらい共感性が高い。
サビは3回目の「瞳に吸い込まれてしまう」から音数が増えることで、より気持ちが前面に伝わってくるような気がする。
演奏に加えて、言葉数少ないながらに飽きさせない声の魅力は間違いなくある。
謎女(なぞめ):謎に包まれた、正体不明のアーティスト。2019年11月『wit and love / child dancer』にてメジャーデビュー。
4 電話と恐竜 (feat.相沢)
目の前が真っ暗になった時に「セピア色ってこんな感じ?」って言われたら、私なら一発で惚れてしまう。
別れの電話を巡る女の子を、ファンシーにポップに描き出した一曲。
生活の描写と、ダイナソーに染まり切った夢の世界が共存。
ファンタジーでふわふわした夢の世界を、ダイナソー一色にすることで的確に表した。
夢と、女の子の焦りの両方が加速していくような後半の畳み掛けも心地よい。
最後に鳴った電話の音は女の子の夢なのか、本当にかかってきているのか…。
相沢:歌い手。ニコニコ動画への歌ってみたの初投稿は2017年。indigo la Endの『夜の恋は』にもコーラスで参加している。
5 恋のこと
さきほどまでのJKソングとは一変、大人の曲だ。一行でそうわかる。
この曲の一人称は〈僕〉なわけだけど、ここにきてこのアルバムに性別なんて関係ないのではと気づく。
音楽を表現したいように楽しみ、人の気持ちの起伏を書いて歌う。
初めての恋に囚われながらもがく様を、初恋が自分の感性全てを縛り付けてしまうようなもがきを描く。
「あれから変われることばかり」という希望にもとれる文は、それだけ価値観を作り上げられた固定的な意味にもとれる。
誰かの家に泊まることを午前2時と歯ブラシで、心模様を天気で。
小説の一文のように情景を落とし込んでいく。
にしな:Spotifyがその年に注目するニューカマー「RADAR:Early Noise 2021」に選出。今年7月に新アルバム『1999』のリリースが控えている。
6 ハートは温泉美人の私のものよ (feat.謎女)
アルバムを手に取り最初に聴きたくなってしまう曲名のインパクト。
謎女さん、『瞳に吸い込まれてしまう』に続き目の敵の〈あの子〉がいる。
曲ごとにシチュエーションが変わりながらも、ボーカリスト主体の作品群だからこそ共通点も見てとれるのが面白い。
終始妬んでいるわけではない、むしろ部分的に敵対心を覗かせるからこそ際立つ。
自分を「未来の温泉美人」と、あの子を「一生性悪」と言い放つのが最高に皮肉効いてる。
そしてアクセントにa段を多用することで自然な聴き心地の良さが出ている。
7 点と線 (feat.さとうもか)
弾むようにさとうもかの声になっていくリリック。
「いつも振り回されるだけで答えはNOだった」のリピートセクションは徐々に感情が溢れ上乗せされていく様が感じ取れる。
ラップ調の箇所もあいまって、序盤からたくさんの表情を見せるさとうの技量がうかがえる。
〈君〉への不満が次から次へ、一度口を開くと言葉が止まらない。
そんな主人公の気持ちが、溢れ出る早口がラップとかなりあっているように思う。
点と線、一点で重なることはできても寄り添い交わることは叶わない。
〈君〉にとって〈僕〉が気を紛らわす点だったのか、思い続ける〈僕〉の線のような気持ちに〈君〉はたまにしか応えることがなかったのか。切ない。
さとうもか:昨年メジャーデビューした岡山出身のシンガーソングライター。先月2枚のシングルをデジタルリリースしている。
8 だからラブ (feat.相沢&映秀。)
恋だの愛だの、重きの置き方は結局人それぞれで、自分の思うようにすれば良い。
冒頭の歌詞は、解釈が受け手に委ねられる音楽に似ているような気がする。
恋に落ちるなんていうけれど、この曲は堕ちるという方がしっくりくる。
歌詞に余白を残しながらも重厚な関係を描き、その考える余地に万人に当てはまる要素があるように思える。
相沢の繊細な声と落ち着いたメロディで力強い意志を表現し、2番から映秀。も合流することでより鮮明に2人の存在を感じられる一曲。
映秀。(えいしゅう。):先月20歳になったばかりのソウル生まれのアーティスト。にしな同様、ネクストブレイクアーティスト「RADAR:Early Noise 2021」の10組に選出される。
9 ピーナッツバターシークレット (feat.CLR)
最近礼賛でも注目を浴びたサーヤ、美的計画でも川谷とタッグを組んでいる。
tinyのくだりでリスナーを一気に引き込む。これがCLRか、と感嘆。
カタカナと英語の使い方がうまい。口ずさみたくなるフレーズを巧みに挟んでいる。
難しすぎず聴き馴染みある言葉を織り交ぜてるからこそ、歌詞に深い意味を見出さなくても好きになれる。
一歩間違えると意味不明になりかねない音を、見事にキャッチーへと昇華した作品。
川谷とCLR、同じタッグでもどちらが楽曲を手掛けたかで聴き比べると面白そう。
CLR(クレア):お笑い芸人ラランドのサーヤのアーティスト名義。昨年12月に結成したバンド礼賛では作詞作曲とボーカルを担当。
10 KISSのたびギュッとグッと
美的計画始まりの一曲。
一枚のアルバムを作りたいというもとに始まった第一作目が、こうしてアルバムに収録される。
エモい。
エモいで片付けたくないけれど、年月と川谷の創作性と多彩なボーカリストがいたからこその結晶だと思うと感慨深い。
「気持ちも曲げるユリゲラー」という、スプーンを見るたびに思い出したいフレーズ。
10曲目まで来ても飽きさせない語彙力を見せつけてくる、羨ましい見習いたい。
3分とは思えない凝縮された曲の密度。
ぎゅっとぐっと、じわじわと暖かくなるような盛り上がりを見せる。
歌の終わりから頭へ、無限リピートできる構成のようにも感じる。
11 マウントゲーム (feat.青空&絲花)
湿度高めな曲が続いたけれど雰囲気が一転。
もはや若者や女社会のネタとなりつつあるカースト制やマウントの取り合い。
ふたりの女性ボーカルでそれを痛快なテンポで歌い上げる。
『だからラブ』のデュエットとは毛色をガラッと変えてくる。
厄介事から距離を置くのではなく、闘って勝ってやりたいというスタンスの曲はなかなか珍しいのでは。
最後に登場する「モノグラム」とは、2つ以上の文字や記号を重ねて1つの記号を形成したもの。
検索するとVUITTONのロゴが真っ先にヒットする。
「ギラリと光るバッグ」と「モノグラム」をかけたと思うと恐ろしい。
結局持ち歩いているのは、見栄を張るためだけの飾りなんだ。
青空(そら):SNSを中心に弾き語りを載せる18歳のシンガーソングライター。福井出身で少しずつ東京に進出中。
絲花(いとは):京都在住のシンガーソングライター。Twitterにてほぼ毎日カバー動画を投稿。
12 文読む私
何度目かわからない、歌詞を読みこれぞ女の子~!と思うと同時に、これを書いたのは川谷絵音であることを思い出す。心に女の子を飼ってる。
そしてベースが心地よいったらありゃしない。
間奏で低音が前に出ることでかわいらしさより女らしさが増す。
アルバムを通して言えることだが、自己肯定感が高く自分という人間をしっかり捉えている子の描写が多い。
アルバムの締めとして歌詞はもちろん演奏もしっかり聴かせてくるこの曲を持ってくるのことで、可愛く生きたい全ての人が前を向いて進める曲群が完成した。
みちゃろっく第3段『BITEKI』レビューを読んでくださりありがとうございます。
川谷絵音さんというと、2014年のMステで披露した「デジタルモグラ」を思い出します。
当時はサブスクなんてまだ知らず音楽を聴く手段も時間も限られていた私でしたが、録画したMステを何回も観てあの独特なリズムを体に染み込ませていました。
当時高校生だった私にとって、川谷絵音率いるゲスの極み乙女。は「なんじゃこの人たち面白いかっこいい!」となるのに十分すぎる存在で。
それから8年経ち、もはやひとつの呼称で呼べなくなった川谷絵音さんの音楽に再び衝撃を受けています。
ひとりの人間でありながら脅威的な作成スピードと話題性を兼ね備えた人だと思っています。
コロナでツアーが中止になってしまったり、私用でゲスの出番だけフェスを抜ける羽目になったり、いまだに生でお目にかかれていないのですが。
来たる5月4日、JAPAN JAM2022にてようやくその音楽を浴びれそうです。
デジタルモグラが流れた暁には、8年越しにガッツポーズ掲げてやろうと思います。
GW中にも新しく記事をあげる予定です!
みなさんおすすめのアーティストや曲があれば是非コメントお願いいたします。
最後に、ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
専門学校の友人たちにTwitterのフォロワーさん、たくさんの音楽好きに囲まれた幸せな4月でした。
2022年のMy Hair is Badにフォーカスした意欲作『angels』
Mステで初のテレビ出演、メジャー後の全曲をサブスク解禁、渋谷駅前に大々的な広告展開。
破竹の勢いで新たな挑戦をし続けるMy Hair is Bad。
4月12日に約3年ぶりとなるアルバム『angels』が発売された。
『味方』と『正直な話』、『綾』と『舌』はいずれも恋愛の曲だが、幸せと別れ両方をリアルに描けるマイヘアの真骨頂が見てとれる。
発売に先駆け解禁されていた『カモフラージュ』や『歓声をさがして』は、アルバムとして聴くことでよりマイヘアの青春らしさが浮かびあがる。
時代を切り取った『白春夢』に、耳に残ること間違いなしの『仕事が終わったら』『リルフィン・リルフィン』。
それらの楽曲に全く埋もれない『サマー・イン・サマー』『翠』『ギャグにしようぜ』『花びらの中に』といった新曲たち。
アルバムは多くの人に待ち望まれ、メディア露出が増えたことでより多くのファン層を獲得している2022年のMy Hair is Bad。
『angels』は、今の彼らだからこそ世に出せる曲が並ぶマイヘア屈指の意欲作だ。
カモフラージュ
一曲目を飾るに相応しい、今のマイヘアを反映するような快速スタートダッシュ。
1万を中心に歌詞の頭は〈ou〉で韻が踏まれており、聴き心地が良い。
《思い出はあの頃の今だった》《いくつになっても心は自由であることを》
いつまでも若々しく、熱いライブを届け続ける3人らしい青春の一曲。
携帯片手に聴きながら、MVだとここでロゴが来るんだよなぁと想像してしまう。
MVが3分33秒=《僕らのナンバーは333》なのは狙ったのかな…。
サマー・イン・サマー
SUMMER SONIC 2022の出演が決まったことだし、夏空の下で聴きたい曲が増えた。
思い出と今、漫画と実写映画という対比を各所に織り交ぜながら、未来への光も歌っている。
今は思い出になっていく(『カモフラージュ』)と言い、今の光は未来に届くと言っている。
ずっと繋がっていると示唆するのは、彼ららしさを残しながらも確実に世間に名を広げている最新のマイヘアが鳴らすからこそ意味があるのでは。
歓声をさがして
Mステで披露され、アルバム発売に合わせMVも公開された注目曲。
音楽に限らず《なんでもいい 好きならいい》と、
《いつかそれに出会えたらいい》と、聴く人すべての背中を押す。
今回の施策たちでさらにファン層を広げるマイヘアにぴったり。
味方
2020年12月23発売の配信シングル『love』より、今作にも収録。
元から配信されていたことに加え、最近のライブでもセトリ入りしていたことから耳馴染みある人が多いのでは。
バンドサウンド3曲の後に持ってくるバラード調の曲として間違いない力強さを持つ。
既発曲ながら〈映画〉や〈漫画〉といった言葉で新曲とのつながりが垣間見える。
君と僕の、穏やかながら強かな愛を描いた名曲。
綾
「予感の続きとして聴いてください。」
3月26日のダイナマイトホームランツアーファイナルでの椎木のMC。
リアリティある少し大人な恋愛模様を描くのが得意な椎木の新境地。
彼女には彼氏がいるとわかりながらも夢中であった『予感』、結婚後も続いた内緒で綺麗な秘密の関係がついに『綾』で終わる。
君からの《「またね。」》は、僕が言う《さようなら》に。
両曲どちらともで電話をかけることが許されていない僕が切ない。
綾という言葉は複雑に交わると言った意味を持つとともに、上品で美しい女性らしさをイメージさせる。
ふたりの関係と、僕から見た君。ふたつの意味を込めたのかな。
正直な話
「今目の前にいるのが、My Hair is Bad。」「信じなくていい、期待してくれ。」
言葉数が圧倒的に多いライブをしながら、実力で魅せてきたマイヘアを体現する曲。
行動を信じながらも、やはり言葉にして伝えることは大切だということ。
恋愛ソングなのに、生き様やバンドの背景にまで思いを馳せられる不思議な曲だ。
《正直な話 僕のすることを信じてほしい「やっぱこの人でよかった。」と思えるようにするから》椎木渾身の一言のようなこの部分が大好き。
翠
アルバムの真ん中に位置する『翠』。
恋愛模様3曲が続き、ここからまたリズムが昇りはじめる。
曲名通りの爽やかさ。
そしてマイヘアの曲は口語であるからこそ心に響きやすいと再確認する曲。
内心を素直に赤裸々に話しているような歌詞と、旅立ちへの寄り添い。
忙しくなった時原点に立ち帰れそうなこの曲を、来年の春も聴いていたい。
仕事が終わったら
痛快ソングがきた!!酒名連呼から始まる駆け抜けソング。
約90秒に働く人の欲望を詰め込んでいる。
マイヘアのアルバムを聴いていて、こういった曲調が来ると嬉しくなる。
未成年でマイヘアを好きなみんな、数年後にこの曲をより噛み締めよう。飲み干そう。
学生の頃マイヘアを聴いていたのに気づいたら社会に出て距離が生まれたそこの元学生、これを聴け、マイヘアの沼に戻ってこい。
リルフィン・リルフィン
全曲トレーラーでも異彩を放った、みんな大好きこの枠。
過去作では『燃える偉人たち』『ワーカーインザダークネス』など、どれも中毒性抜群。
早くライブに行って、サビの部分でコールアンドレスポンスしたい…!
椎木「リルフィン」観客「リルフィ~ン!」椎木「中指より」「も~!」やりたい…!!
考えるな感じろと言いたい最強ソング。
個人的には《生きて腸まで届いた元カレの「重いんだよ。」》で、渋谷広告の隣にあった腸スゴの広告との運命を感じてクスッとなった。
ギャグにしようぜ
言葉がぎゅっと詰まったバンドサウンド、最高。
《嫌な記憶の花が違う色に染まるまで水をあげよう》
曲全体を包むあたたかい優しさが、この歌詞にとても表れている気がする。
楽観的だけれども見離しはしない、また歩き出すために今はちょっと休もうよと言ってくれるマイヘアの優しさが染みる。
舌
衝撃的な出だし。
《「このまま君の舌を噛み切ったら 嘘をつけなくなるかな?」》
Twitterでも呟いたが、五月の◯や貴方解剖純○化がよぎる。
無垢で真っ白な恋愛の対極にある、今にも崩れそうでグレーな恋愛を奏でさせたら一級品のマイヘア。
君への執着、どろっどろの欲を描いた渾身の恋愛ソング。
嘘をついてほしくない、けれど本当だけだったら傷ついて終わりが見えてしまう。
僕の目線のみで描かれるからこその愛の重さが癖になる。
白春夢
聴く人を一瞬で2020年4月に連れて行く。
コロナ禍で誰もが経験した淡々とした家での毎日や倦怠感を作品に昇華している。
ステイホームで生活が一変し、非現実のようで味気ないあの日々が〈白昼夢〉や〈春夢〉とかけられているのだろう。
《もう元に戻るより 元より良いように 夢からまた夢へ》
多くの人が願う日常と、そして音楽業界への願いが込められているように聴こえる。
花びらの中に
今年の3月、マイヘアはメンバー全員が30代になり新フェーズに突入した。
「桜は散る時が一番綺麗だ。」と、見事な散り際を見せた代々木でのライブがよみがえる。
「いつか終わるバンド活動というものを、終わりを意識しながらやっている。でも、いつまでも続けていきたい。」
代々木でそう話した椎木の姿が、《いつか必ず沈む船でまだあの地図を描き続けてる》といったフレーズから思い出される。
既に新しいことをやりまくっている彼らだが、30代のマイヘアは一味違うぞという決意表明にも受けとれるアルバム最後の曲だ。
30代という一つの区切りにある今、
My Hair is Badのこれまでとこれからに思いを馳せることができる今作。
いつもTシャツにスキニーのラフな格好で、全力で音を掻き鳴らすマイヘア。
私にとって、彼らは文化祭の学生バンドのような熱さと眩しさと脆さを感じさせるバンドだ。
2018年の春、ツタロックで初めて彼らの音楽を生で聴いた。
そこからワンマンへと足を運び始め、日に日に好きが大きくなった。
これまで精力的なライブ活動をし、ダイナマイトホームランツアーでの360度ステージでは
その圧倒的な実力を見せつけた。
今回アルバムとともに多くの試みをした彼らの音楽は、
今まで以上に多くの人に届くようになる。
ライブに足を運ぶ人も増えるだろう。
ライブでのロックバンド然とした心意気を持ったまま、これからも進み続けていってほしい。